デグーの歯牙疾患について(論文を読み解こう!)

皆様!こんにちは!😃最近は、寒暖差がはげしいですね(> <)☀️☃️
今回は、デグーに多発する歯の疾患について、よくまとまった論文があったのでご紹介させていただきます。疾患についての解説と共に、「学術論文なんて絶対読めないわ!」という方にも「へー!」と思って頂けるように、噛み砕いて解説してみたいと思います🖌。

🐹 今回の論文タイトル
Prevalence of dental disorders in degus and evaluation of diagnostic methods to determine dental disease and its prognosis
「デグーにおける歯牙疾患の有病率、診断方法の評価そして予後について」

🐹著者
Hester van Bolhuis、Lotte van Hoffenら
→ オランダのエキゾチック動物レスキューセンター(APP)の獣医師らによって報告された学術論文です

🐹序論(→ 本題に入る前の前置きを「序論」といいます)
➤飼育下のデグーでは歯牙疾患の発生が非常に多くみられる(60%)。過去の報告では、2歳以上での発生が多い
➤屋外に放し飼いのデグーでは、エネルギー要求量を満たすため、低エネルギーな飼料(牧草など)を大量に食べる。そのため、歯が著しく磨耗される
➤一方で、ペレットを自由摂取させたデグー(室内飼育のデグー)では、繊維の摂取量が減少し、歯が不適切に磨耗され、歯棘形成・臼歯過長が高率に発生する
→ 別の論文から引用した歯棘・臼歯過長の写真。口の粘膜を傷つけたり咀嚼しずらくなったりするために食欲低下を引き起こします。
   
Christoph Mansら(2016)「Anatomy and Disorders of the Oral Cavity of Chinchillas and Degusy」より引用

➤もう1つの要因として、食餌中のカルシウム(Ca)とリン(P)比の不均衡が原因なのではないか?と言われている

➤(といった背景があり)デグーの健康状態を維持するため、歯牙疾患の有病率や歯牙疾患に影響する因子の調査を行った。また、早期診断と予後の判定のために何を評価すればいいか検討した。
→学術文献における序論では、なぜその研究を行う至ったのか?という著者の経緯・結果の予測・テーマに対するこれまでに分かっている情報などがまとめられています。(病気の情報が、よくまとまって記載されているので私は序論が結構好きです)

🐹材料および方法(この論文では同時に2の研究を実施しています)
研究A:225頭のデグーのシグネルメント(個体情報)や治療記録のデータをまとめて、歯牙疾患のある群と健康群で比較検討してみた

研究B:研究Aで死亡したデグー 36頭を剖検し、頭部の肉眼的な評価や組織学的評価(病理検査)、X線撮影による評価、下顎骨のCaとPの含量を分析してみた
→この研究に含まれたデグーの数はとても多いですね!集団の数が多ければ多いほど、データの信頼性は高いと考えることができます。保護施設のデグーであるが故に、病理検査もそれなりに実施できた点が素晴らしいですね!(一般飼育下では、ご家族のご意向もあり病理検査はあまり実施されません💦)

🐹結果
➤APPセンターのデグー(225頭)の中で、歯牙疾患に罹患していたのは全体の42.2%
 →半数近くも..。かなり多いですね😅

➤最も多かったのは、臼歯の不正咬合でした(29.8%)。切歯(前歯)の異常は7.6%でした。

臼歯不正咬合の症例↑

➤歯の治療後、再発は57.9%でみられた
 → 私の経験的にも、不正咬合を一回発症するとその多くが再発し、継続的な歯の治療が必要になります
   ウサギやチンチラも同様に、残念ながら1回の治療では終わりません

➤歯牙疾患による死亡率は18.7%だった(自然死と安楽死を含む)

➤オスの方が有病率が高かった(41.3% vs 23.2%)

➤歯牙疾患の発生は4歳頃に最も多かった
 →過去の報告では、2歳頃とするものもあります

➤剖検したデグーの中で不正咬合を有した群(24/36頭)では、88%に下顎に触知可能な結節(顎のでっぱり)が触知された

臼歯の先端が過長したデグーの下顎

➤歯列に異常のあるデグーの100%で、歯根の伸展がみられた
 → デグーなどの常生歯(歯が常に伸びる)の動物の歯は、上方だけでなく下方にも伸展します。これが大変厄介なポイントです。下方に伸長した歯を根本的に治療することはできません

➤歯牙疾患を有する群と健常群で、Ca:P比に有意差はなかった
 → 「有意差なし」とは、統計学的に差が無かったということです。

🐹考察
✔️ Jeklらの過去の報告では、全体の60%(n=300頭)が歯牙疾患に罹患していたと報告されており、今回の研究では歯牙疾患の発生率がそれよりも低かった(全体の34.2%)
→ 著者らの考えでは、保護施設の集団(本研究)なのか、病院に来院した集団(Jeklら)なのかで差が出たのでは?と考察しています。集団の性質による違いで、結果に差が出やすいため解釈には注意が必要ですね!

✔️歯牙疾患の再発率が高かったことに対して(治療した症例のうち57.9%)
→ 不正咬合が続いた結果、咀嚼筋が引き伸ばされることで正常な咀嚼ができなくなります。そのため、臼歯の異常は完治せず、異常な伸展を続けてしまうのでは?と考察されています。なるほど〜納得です😫

✔️オスの有病率が高かったことに対して
→明らかな原因は不明ですが、モルモットおよびウサギにおいても、オスの方が後天性歯牙疾患の発生が多いと報告されています。先天性の因子があるのか?なぜなのでしょうね?

✔️下顎の歯根過長について
→ 下顎の歯根過長は、カルテから情報を集めた研究Aで発見されず、剖検を実施した研究Bで発見されたというケースがいくつか存在していました。歯根の過長は、生前診断では、実はもっと見落とされるかもしれないとのこと。
→下顎の触診では、早期発見が難しい場合があるため、早期診断のためには画像検査を組み合わせることが重要であると考察しています。


✔️下顎骨のCa:P比は、疾患群と健常群で差が無かった
→ いくつかの研究で食事中のCa:P比の不均衡が歯の成長に悪影響を及ぼすと報告されており、本研究でもAAPセンターに到着するより以前の食事が疾患の発生に影響した可能性はあると考察していました。
→ Ca:P比は2:1が良いそうです。Ca:P比を1:1にしたペレットを給餌したデグーで、3週間後に臼歯の過長が生じ、骨密度が低下したという報告もあります。


🐹結論
✔️ デグーの歯牙疾患の有病率は高い
✔️ 適切な食餌と、体重測定、臨床徴候の有無、定期的な口腔内検査による管理が重要
✔️ 歯冠部分の過長が見られたら、下顎の触診と画像検査を推奨する
✔️臼歯の不正咬合が生じてしまうと、完治は難しく予後は不良である
→ 臼歯の過長は、一度発症してしまうとその完治は難しく、生涯を通じた治療が必要になります。そのため、日頃から繊維質(牧草や葉物)を十分に摂取し、歯牙疾患にならないことがとても重要であると再確認できました。🤔

医学文献は、なかなか小難しい内容ばかりで慣れるまでに時間がかかります,,,。ですが、この1つを読んでもとても勉強になりましたね!今後もご紹介できる文献がありましたら随時UPしていこうと思います😊