皮膚病が治らない~スキンケアの悩みパート② シャンプーの仕方、選び方編~

前回はシャンプーの知られざるデメリットのお話をさせていただきました。
シャンプーにより皮膚のバリア機能を障害している可能性をご理解いただけたかと思います。

重ねて注意ですが、皮膚病の患者さんにはシャンプーが必要な方もいらっしゃいますので、一概にシャンプーが害悪というわけではありません。みなさんのご判断でシャンプーを中止せずかかりつけの先生に必ず相談することをお勧めします。

そんなシャンプーですが、日常的に実施する場合シャンプーの仕方や選び方が気になるとことかと思います。
ご来院いただく方からも多くのご質問をいただきますので今回は予告通りシャンプーの仕方やその選び方をお話してみようと思います。

少し今回は長くなりそうですが、興味がありましたらご拝読いただけますと幸いです。

【シャンプーのやり方】
最初にシャンプーを実施する際にやってはいけないこと6選を挙げようと思います

① 熱すぎる温度でのシャンプーはダメ
② ゴシゴシ洗うのはダメ
③ ドライヤーでしっかり乾燥させるのはダメ
④ 刺激の強いシャンプーはダメ
⑤ シャンプー剤の不適切な保管はダメ
⑥ シャンプーだけで終わりにしてはダメ!必ず保湿剤を使用する!

以上がシャンプーを実施する際にやってはダメなこと6つです。⑥が大きく目立ちますね…(笑)
それでは1つずつお話をしていこうと思います。

① 熱すぎる温度でのシャンプー
 皮膚病がある患者さんの多くが皮膚に炎症をもっており熱すぎる温度でのシャンプーはやけどにお湯をかけるようなものです。また当然ですが温度が高すぎると皮膚に刺激が強いので可能な限り皮膚にやさしくがスキンケアで大切なことです。
それではどの程度の温度が適切なのでしょうか。

  冷水浴:<24℃
  低温浴:25~34℃
不感温度浴:35~36℃
  微温浴:37~39℃

   温浴:40~41℃
  高温浴:>42℃

上にお示ししたのはヒトで参考とされる入浴の温度調整になります。不感温度浴とは心拍数や血圧などの生理的な機能に全く影響を及ぼさない入浴温度とされ皮膚への刺激が最も少ないといわれています。また微温浴では皮膚の毛細血管が拡張し血流が促進されリラックス効果があるとされています。

ワンちゃんのシャンプーでは35~38℃の設定温度が適温とされていますが、この温度を正確に測ることは難しいと思います。
コツはシャンプーを実施する際に手などで温度を感じていただき、熱くもなく冷たくもない何も感じないような温度(つまり体温とほどんど同じくらいの温度)がシャンプーをする際の適温だと思っていただいて結構です!
よくこのお話をすると「冷たすぎないですか?」とご質問をいただきます。これは我々が温浴から高温浴で入浴をすることにあまりにも慣れすぎてしまい設定温度にギャップを感じているにすぎませんのでご心配せず!

② ゴシゴシ洗うのはダメ
 ゴシゴシ洗うのは皮膚に刺激強いから…。もちろん正しいですが、もう少し皮膚科的なお話をしてみようと思います。
シャンプーをゴシゴシ実施してしまうと皮膚表面の毛や上皮細胞達を破壊してしまいそれが皮膚の中に入り込んでしまうことがあります。これにより「異物反応」といった反応が引き起り皮膚炎を引き起こす患者さん達がいらっしゃいます。また強い力でシャンプーをすることでシャンプー剤が皮膚の中に染み込みこれも皮膚炎の原因となります。

シャンプー後にこのようなトラブルを引き起こしてしまったものを「グルーミング後癤腫(せつしゅ)症」と呼びます。

この癤腫症はすべての患者さんで注意すべきかというと、なりやすい犬種が存在します。それは「短毛腫」の患者さんです。
たとえばフレンチブルドックは毛は非常に短く固い毛をしており、抱っこすると我々の肌もチクチクかゆくなったりすることがあります。
このような毛質を持っている患者さんはシャンプーの仕方は注意が必要ですし、そうではない患者さんでもシャンプーは優しく実施すべきです。

実施の仕方ですが簡単です。桶やバケツなのでたくさんの泡を作ってゴシゴシせず毛並みに沿ってゆっくりと実施してあげてください。撫でるようにでシャンプーは十分です!

③ ドライヤーでしっかり乾燥させるのはダメ
 昔は指の間までしっかり乾かさないと!と言われてました。実際我が家のワンちゃんも、昔は指の間までしっかりドライヤーで乾燥させていました。しかし過剰なドライヤーは逆に皮膚を乾燥させ皮膚炎を悪化させます。
しかし濡れたままではワンちゃんも寒いので重要なことはドライヤーをかける時間を短くすることです。
そこで大切なことは「タオルドライ」です!使用するタオルの材質も工夫できることとして挙げられます。
例えば吸水性がよいマイクロファイバーや習い事で水泳をしたことがある方はご存じかもしれませんが、「セームタオル」といわれる吸水性が非常によいタオルも存在します。これらのタオルを使用してしっかりとタオルドライをし、可能な限りドライヤーをかける時間を短くしてあげましょう。

④ 刺激の強いシャンプーはダメ
 刺激が強いシャンプーより低刺激シャンプーを使うべきであることはみなさんご存じのことかと思います。ではどんなシャンプーが低刺激シャンプーと呼ばれるものでしょうか。シャンプーの皮膚刺激に関与しているものは主に界面活性剤になります。

界面活性剤は陽イオン性、陰イオン性、両イオン性、非イオン性などが存在しており、主にシャンプーや石鹸は陰イオン性のものが使用されています。陰イオン性界面活性剤は泡立ちがよく洗浄力が強いといった特徴を持ち、シャンプーにはもってこいの成分にはなります。

この陰イオン性界面活性剤はさらに高級アルコール系石鹸系アミノ酸系の3つに分類されます。高級アルコール系は洗浄力は高く脱脂作用強いことが知られていますが皮膚への刺激が強いことが欠点です。石鹸系界面活性剤はアルカリ性洗浄剤であり、皮膚病の患者さんの中には「膿皮症」という皮膚の感染症を患っている患者さんもおり、膿皮症は皮膚pHがアルカリに偏ることで悪化を招く可能性があるため石鹸系洗浄剤は敬遠されがちです。最後はアミノ酸系ですが、前記3つの界面活性剤の中で最も皮膚への刺激が弱く、皮膚病の患者さんにとって適したものにはなりますが泡立ちが悪いのが欠点といえます。

一概に高級アルコール系や石鹸系洗浄剤が皮膚の悪化を招くわけではないため、患者さんに合わせて洗浄剤を選択するのがよいかと思いますが、皮膚への刺激を考えるとアミノ酸系洗浄剤を選択するのがベターかと思われます。

もし試しにシャンプーを変えてみたいなどご要望がございましたらご相談ください。

⑤ シャンプー剤の不適切な保管はダメ
 シャンプーにも保存期間が存在しています。当然のことかと思いますが使用期限を遵守することと、高温多湿の場所での保管は、シャンプー剤の中で菌が繁殖し、汚染の原因となりますので保管場所にも気を使っていただけますとよいかと思います。

⑥ シャンプーだけで終わりにしてしまうのはダメ!必ず保湿剤を使用する!
今回挙げさせていただいたものはどれも非常に重要なことですが、中でも保湿剤を使用することは最も重要といっても過言ではありません。

一度想像してみてください。
皆さんが顔を洗った後、もしくは入浴のあと何をしますでしょうか。必ずと言ってもいいほど化粧水や乳液、ボディークリームなど使用し肌の乾燥を予防すると思います。もしこれらを忘れると数時間後には肌が突っ張って乾燥しているのが1度は経験したことがあるかもしれません。

ワンちゃんも入浴後は同じです。過去シャンプー後保湿ローションを塗布したワンちゃんとそうでない子では、角層内の水分量に大きな差が出ていることが報告されました(Shimoura, AMAM2019)。また同研究により、前回トピックに挙げさせていただいた経表皮水分蒸散量(TEWL:表皮から失われる水分量)も保湿剤を塗布したワンちゃんの方がしない場合と比較し改善が早いことが明らかとなりました。

入浴後の保湿剤の使用はTEWLの改善を早め、角層内の水分量を確保することができ皮膚のバリア機能の補修に重要な役割を担っていることがわかります。
皆さんもシャンプーのみでおしまいにしてしまっている場合は、是非保湿剤を使用してあげてください。

いかがだったでしょうか。
かなり長文になってしましましたがシャンプーを実施する際の注意点が伝わりましたでしょうか。
くどいようですが、皮膚病の患者さんの中にはシャンプーを必要としている子もいますので、一概にシャンプーが害悪というわけではありません。状況に応じてシャンプー製剤を使用することは決して悪いことではありませんが、可能であれば低刺激シャンプーを使用し、保湿はしっかりとしていただき、できるだけ皮膚には優しくを心がけていただけますと幸いです。

次回は最後に挙げさせていただいた保湿についてお話をしてみようと思います。
ご興味がありましたら次回の内容もボリューミーになりそうですがご拝読いただけますと幸いです。