予防シーズンに先立って、今回はのテーマは猫のフィラリラ症についてです🪱。
フィラリア感染症といえば、「犬」というイメージが強いですよね。
なぜ、猫にも予防が必要なのか?、どんな症状がでるのか?などについてご紹介します。
必ず押さえておきたいPOINT☞
猫のフィラリア症は犬よりヤバい!!
これだけは知っておきましょう!
🦟 原因
→ 犬糸状虫(学名:Dirofilaria immitis)
→他にもD. repensなどの種類がありますが、日本ではimmitisの発生のみです。
→ 「トウゴウヤブカ」「ヒトスジシマカ」「アカイエカ」によって媒介されます。
画像出典:ノミダニフィラリア.com
コトバンク「ヒトスジシマカ」
🦟 フィラリアの生態について
→ 終宿主は「犬」です。
フィラリア最も居心地よく寄生できる動物は犬であり、猫は本来の宿主ではありません。
そのため、感染しても多くが成虫まで成長することがでず少数感染である事が多いです。
→ フィラリアのライフサイクル(生まれて繁殖して寿命を終えるまで)には、「蚊=中間宿主」と「動物=終宿主」
の2者が必要です(図参照)。L3幼虫が動物の体内に侵入すると、約3ヶ月かけて脱皮をくり返し成虫
(L5)になります。
→ 成虫のフィラリアは、最終的に心臓(正確には肺動脈)に寄生し、犬では約5年、猫では2〜4年、
生存します。
出典:著.日本循環器学会「犬と猫の心臓病学」より
🦟 猫フィラリア症の発生について
→ 猫の感染率は、犬の感染率の5〜20%と言われています
→ 全国的に発生が見られています。
✓ 1997年 埼玉県 2歳以上の猫における成虫感染率 4.1%
✓ 1998年 成虫感染率 野良猫 0.5 – 9.5 % / 家猫 3.0 – 5.2 %
✓ 2004年 三重県 抗体陽性率(感染したことがある猫)2.4%
✓ 2008年 山口県 飼育猫における抗体陽性率 6.0%
✓ 2011年 関東の地域猫 抗体陽性率 8.0%
→ 徐々に増えきてそう?そして感染率が意外と高い…😱
直近での大規模な調査データはありませんでしたが、日本の平均気温は年々上昇している
ため蚊が発生する期間の延長とともに感染も拡大している可能性があります。
🦟 感染するとどうなるの?
猫の場合、感染からの経過時間によって臨床徴候にも変化が現れます。
第1期:未成熟虫が肺動脈に到達
肺の免疫細胞を刺激し、肺の急性炎症を引き起こします。その結果、咳嗽・呼吸困難・食事のタイミングと無関係な嘔吐・急死などの臨床徴候が現れます。
未成熟虫が成虫になると、臨床徴候が一旦緩和されるという傾向もあります。
第2期:体内で成虫が死滅したタイミング
成虫の死骸によって、肺への重篤な炎症反応、血栓塞栓症、右心不全徴候などが引き起こされます。この時期に
突然死する可能性が最も高いと言われており、10 ~ 20%の猫が突然死します。
第3期:感染を乗り越えた後の慢性期
抗体検査で陰性が確認できれば、感染を克服したと考えることができます。ただ、第1期〜第2期で生じた肺への影響は不可逆的であり、咳などの呼吸器徴候が残る可能性があります。
🦟 診断方法について
❝犬と同じようには診断できません。猫のフィラリア症の診断はとても難しく、
見逃されやすい疾患です!❞
→ ミクロフィラリアが検出ができない
猫ではミクロフィラリア(L3やL4など)が血液中に出現する期間は1〜2ヶ月と非常に短
く、検査を実施してもミクロフィラリアが出現していないタイミングでは検出できませ
ん。また、検査が陽性になるのは、メスの寄生虫が感染した場合のみです。
(ちなみに、犬の場合ミクロフィラリアの寿命は1-2年です。全然違いますね!)
→感染していても抗体検査・抗原検査で陽性にならない
抗体検査および抗原検査にずれにおいても検査のタイミングによって、かなりの確率で「陰性」になります。
それでも、「陽性」判定が出た際には、フィラリア感染を強く疑うことができるので診断
にはとても重要です
→画像検査で診断できるの?
犬では多数の成虫が右心~肺動脈内で検出されることが多いため、超音波検査においてフ
ィラリラ感染を診断することができます。しかし、猫は少数寄生であり見落とされる可能
性も高いです。また、ミクロフィラリア感染のみでも臨床徴候が誘発されるので、画像診
断だけでは除外できません
🦟 治療方法について
❝感染後、有効的な治療方法はない❞
→基本的に、成虫の駆虫はしてはいけない🈲
成虫が生きている間は、免疫寛容状態のため臨床徴候は現れません。しかし、成虫が死亡
すると死骸から分泌される物質によって過剰な免疫反応が引き起こされ、肺炎や血栓塞栓
症が悪化すると考えられています。
また、駆虫薬の投与によって生存期間に有意差はなかったとする報告もあります。
→ 対処療法がメインの治療です
感染した猫が感染に耐え切るまで、ステロイド投与や右心不全治療などを実施します。
根本治療は難しいため、症状と病状に合わせた治療がメインです。
→ 自然治癒するのか?
自然治癒することがあります。自然治癒までには、半年ほどの期間が必要です。その間
、どの病期においても(第1期〜第3期)突然死リスクがあり、抗原検査・抗体検査・画像
診断による定期的なモニタリングが必要です。
🦟 予防について
❝感染を未然に防ぐのが一番の対策方法!❞
→屋外・屋内に関係なくフィラリア予防を実施する事が推奨されています。
室内飼いの猫でも感染例が多いためですね
→滴下タイプの予防薬を塗布するだけ!
滴下タイプは安全性が高く、事実上99%の予防が可能です。
最近では3ヶ月に1回タイプの滴下予防薬もあり、病院の苦手な猫ちゃんの負担軽減
・ご家族様の通院負担軽減に有用です
→予防期間は?
予防期間は、4月から12月までを推奨しています!
何故かというと、フィラリア予防として推奨されている期間は、蚊が発生する1ヶ月前(感染が生じる1ヶ月前
とする書籍もあります)から蚊が終息後さらに1ヶ月と言われているためです。また、HDU(heartworm development heat unit)という指標からも4月からの予防が適切だと考えています。
※ HDU(heartworm development heat unit)とは?
日本犬糸状虫症研究会から提唱された指標です。フィラリア幼虫が蚊の体内で、動物への感染準備が整った状態(L3の状態)に発育するため必要な積算温度の単位のことを指します。(最高気温+最低気温)÷2−臨界温度(14℃)
でHDUを計算することができます。1日毎にHDUを算出し、積算が130を超えた日が感染開始日というふうに考
えられています。
→ 2023年度で計算やってみました ➢➢➢ 昨年は5月17日でHDUは130を超えました。
→これより1ヶ月前からの予防スタートが最適だと考えられます。
年々、暖かくなる時期も早まり、蚊の発生時期も年々早まっています。
今後は猫の予防が犬以上に重要になっていくと思われます。
ご家庭の愛猫達が1日でも健康で長生きしてもらうため、予防について是非ご検討下さい😊
参考資料
著.日本循環器学会. 『犬の猫の心臓病学 上巻』
著.石田卓夫. 『猫の診療指針 Part3』
東京都保健医療局 動物愛護相談センター 統計資料
東京都感染症情報センター など