咳・夜間の呼吸困難を呈した犬の1例

咳と夜間の呼吸困難を主訴にご来院いただいたワンちゃんをご紹介させていただきます。
かかりつけの病院さんで様々な治療と検査を実施していおりましたがよくならずお困りとのことでご相談いただきました。

症例:13才
犬種:ダックスフンド
体重:6.3kg
BCS(5段階):4.5

かかりつけの病院さんで胸部レントゲンや心エコー、血液検査はすでに実施済みで、いずれも咳と夜間の呼吸困難につながりそうな明らかな異常は認められておりませんでした。過去抗生剤の投薬やステロイドの内服を実施しておりましたが咳の頻度は変化がないとのことでした。

今回の患者様においては咳の発生しているタイミングが診断に至った非常に重要なポイントとなります。

咳は主に夜間(睡眠時、安静時)に多く、むしろ散歩中や活動時にはほぼ咳は出ておりませんでした。院内でも咳は全くせず非常に元気そうでした。
また咳の仕方も非常に大切なポイントです。今回の患者様は一度咳が出るとしばらく持続的な咳が発生し、咳をするときにはピタッと立ち止まり、最後に痰が絡んだような咳をしておりました(この最後の咳をTerminal retchと呼びます)。

なぜ咳のタイミングと咳の仕方が大切かというと、咳は3つの主な原因部位が存在しており、どの部位から出ている咳なのかで咳の仕方やタイミングが大きくことなります。そしてどの部位から発生している咳なのかがわかると治療内容も大きく変わってきます。

咳の原因部位は主に喉頭性、中枢気道性、そして末梢気道性の3パターンに分かれます。
以下に各々の部位で発生する咳の特徴をまとめました。

今回の患者様は咳の仕方とタイミングから末梢性のトラブルを疑いました。

末梢性咳嗽の場合、感染性や気管・気管支軟化症、腫瘍など様々な疾患が疑われますが、今回さらに重要な点として「体形」が挙げられます。体形はやや肥満傾向であり肋骨の触知と腹部のくびれの確認が困難な状態でした。

以上から今回の咳や睡眠時の呼吸障害の原因として「胸腔内容積制限効果」を疑い減量をご提案いたしました。
ご家族様の努力の甲斐があり体重が10%減るころには(4ヵ月かけての減量)症状はほぼ消失いたしました。

現在も適切な体形を維持しており良好な経過が維持できております。

「胸腔内容積制限効果(Space occupying effect)」とは限られた胸腔内の容積を制限する外的な要因が加わることを言います。小動物臨床で多いものとして心疾患の進行に伴う心拡大、あるいは今回の患者様のように肥満が多くの割合を占めます。心臓が拡大することで胸腔内容積を制限し、結果気管・気管支に影響を及ぼしたり、あるいは肥満により腹腔内脂肪の増加、肝腫大などで横隔膜の動きを制限することで、胸腔内容積を制限し同様に気管・気管支に影響を及ぼすことで咳や呼吸困難といった症状が発生します。

診断は咳や呼吸器に影響を及ぼすその他疾患がなければ強く疑うことが可能ですが、ご自宅での体重コントロールのみが唯一の治療方法となりますので、今回の患者様が良好な経過が得られたのはご家族様の努力によるものと強く感じております。

現在当院では減量用フードのお試しキャンペーンとしてロイヤルカナン満腹感サポート+CLTといった良質な減量フードをお求めやすくご案内しております。

同様の疾患でお困りの方、あるいは頑張っているがなかなか思うように減量が進まず減量用フードへの切り替えを検討中の方がいらっしゃいましたら、フードをお試しいただく良い機会かと思いますのでご興味があればお電話にてご相談いただけますと幸いです。